下請法改正案が、令和7年3月11日に閣議決定され、現在、会期中である通常国会において内閣提出法案(下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案)として審議されていますので、審議経過の速報をお伝えします。
同法案は、令和7年3月11日に衆議院に議案として受理された後、同年4月11日に衆議院経済産業委員会に付託され、同月24日、下請法改正案が以下の修正の上、議決されました。
修正内容は、施行期日について、
「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日」を
「令和八年一月一日」
とされました(附則第一条)。
令和7年4月24日、下請法改正案は、参議院において議案受理されておりますので、今後、参議院経済産業委員会で審議され、参議院本会議で可決された後、改正下請法が成立となります。
衆議院経済産業委員会において、下請法改正案を決議する際、以下の附帯決議がなされております。
附帯決議は、法的拘束力は持ちませんが、立法府としての意思表明であることから、政府はこれを尊重することが求められます。
ご参考まで附帯決議の内容を以下に掲載いたします。
【附帯決議の内容】
政府は、本法施行に当たり、次の諸点について十分配慮すべきである。
一 困っている中小企業を支え、そして、どんな問題も中小企業の立場で考えていくとの中小企業憲章の理念を踏まえ、我が国の経済活力の源泉である中小企業が、その力を最大限発揮できるよう、労務費や原材料費、エネルギーコストの価格転嫁を更に推進するため、必要な措置を検討すること。
二 取引の適正化による価格転嫁から賃上げにつながる好循環が継続する社会の実現に、国民全体の理解の醸成が図られるよう、取組を進めること。
三 協議を適切に行わない代金額の決定等の禁止について、その違反に対して迅速かつ的確に対処するために必要な措置を講ずること。特に、該当する違反行為については、具体的な基準を示すこと。さらに、委託事業者と中小受託事業者の代金に係る協議が形骸化することのないよう、必要な措置についても併せて検討すること。
四 本法において、適用基準として従業員数の基準を追加したが、今後も適用対象の見直しを検討し、本法の効果を高めるよう努めること。
五 本法施行後に、新たな手段による適用逃れなどの事例が起こらぬよう、中小事業者や中小企業団体などとの情報共有や連携強化に更に努めること。また、適用逃れと見られる事例が発生した場合には、速やかに対策を講ずること。
六 本法に基づく検査等が実効的に行われ、あまねく全国において適正な取引の確保が図られるよう、公正取引委員会の体制の抜本的な強化を図ること。また、本法施行後三年を目途に、執行体制について、人員の増員や更なる関係省庁間の連携の強化を含めた必要な見直しに努めること。
七 本法をはじめとする価格転嫁等の取引適正化推進に関する諸施策や「下請」等の用語の見直しについて、委託事業者及び中小受託事業者に対する一層の広報等の充実に努め、周知徹底を図ること。
八 労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針は、価格転嫁の促進に効果が認められているものの、その認知度は低い状況であることから、政府を挙げて周知徹底を図ること。
九 中小受託事業者まで適正な労務費を確保する等の観点から、本法の施行と並行して、各業界における理解の醸成に努めるとともに、現時点で二十一業種に限られている「下請適正取引等推進のためのガイドライン」の策定を幅広い業種に拡大するよう努めること。各省庁にあっては、所管する業界についてガイドラインの策定を進めること。あわせて、既に策定されているガイドラインにおいても、本法の趣旨が反映されているかどうかを点検し、適宜更新をすること。
十 サプライチェーン全体で価格転嫁等の取引適正化を推進するため、本法の対象とならない取引における優越的地位の濫用行為に対しても、引き続き独占禁止法に基づき、厳正に対処すること。
十一 中小企業・小規模事業者が個々では解決できない課題に対応するため、全国中小企業団体中央会を通じた中小企業組合の設立指導や運営指導に取り組むこと。また、中小企業組合が主体となって、事業者と交渉を行うことで価格交渉力を強化できる団体協約の活用について周知を図ること。
下請法改正案は、衆議院本会議において、施行期日を令和8年1月1日とすることが決議されました。
改正下請法では、新たな禁止行為の制定や規制の拡充、適用基準の追加に加え、用語も大きく変更されますので、改正下請法の適用を受ける事業者様におかれましては、改正点について十分にご理解を深めて頂き、来たる改正下請法の施行に備えて頂ければ幸いです。
当事務所では、下請法に関する豊富な実務経験を有する弁護士が適切なアドバイスをさせて頂くことが可能です。ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。
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